舞姫message(81)<伊集院静さん、くも膜下出血から復活 新社会人に贈る言葉>

<伊集院静さん、くも膜下出血から復活 新社会人に贈る言葉>
毎年4月に、舞姫messageで伊集院静さんの「新入社員に贈る言葉」を紹介していました。 
今年1月21日くも膜下出血で倒れ入院されましたので、「今年は無理かな」と心配していましたが緊急に行われた手術は成功、その後奇跡的に回復し、2月にリハビリ病院に転院。現在は自宅で静養しておられ、新聞や雑誌などの7本の連載の再開は秋口になるとのことですが、「四月に新しく社会人となった若者へ贈る言葉」だけを執筆されました。緊急事態宣言によって異常なスタートになった新社会人達、働き方が変わり、今までの常識が通用しない社会になるかもしれません。「苦あれば楽あり」「ネバーギブアップ」、頑張れ、頑張れ新社会人

《ようこそ令和の新社会人》                               
新社会人おめでとう。
今日、君はどんな街の、どんな職場に立っているだろうか。
どこであれ、そこが君の社会人としての出発点だ。
令和の新社会人は少し得をしているぞ。
「えっ! 得ですか?」
それは令和で初めての社会人ということだ。
「なんだ。そんなことですか……」
私も君の立場なら、そう言い「偶然でしょう」と言うかもしれない。
でもそれは違うんだ。偶然は偶然だが、”偶然は神の采配だ”神の采配とは 
私たちの持つ力以上のものが、私たちに与えたものだ。
恋愛という出逢いもそうだし、発見という進歩も実はそうなんだ。
偶然をもうひとつ話しておこう。友人の話だ。
「いや君、我が家では大祖父が明治の人で、祖父が大正、昭和を歩んだ。
そうして、私が昭和、平成を生きている。倅は平成、令和を生きる。ありがたいと思わないか。
この国があり続け、私たちが生きてこられたことを…」友は感慨深く話した。
たしかに素晴らしい国と、人々が今日まで歩んで来た。この脈々たる流れも偶然か?
いや、私はそうは思わない。それぞれの時代に皆懸命に生きてくれたに違いない。
アジアの片隅の、この国で人々は少しでも前へとゆたかにと汗を流し、向かい風に
立ってきた。
そして何より、いつも新しい人が、新しい力を与えてくれた。
昨日までとは違う日本を、国を、職場を作ろうとしたことだ。
令和初の社会人の君に望む。
”新しい君の力と、発想”を思いっ切り提供、提案してくれたまえ。
そのバトンタッチが、いつの日か、まだ見ぬ新しい元号を口ずさむ日を迎えることになるんだ。
人は己以外の人のために何かをすることだ。出世や名誉やお金だけのために生きてはイケナイんだ。
しかし君、先輩たちは厳しいぞ。妥協もしないぞ。さあ立ち向かおう。君ならできる。
だって君は令和最初の社会人じゃないか。
少し疲れたら、空を見上げて、乾杯しよう。
令和の社会人に乾杯        伊集院静